『高校で教わりたかった化学』
『高校で教わりたかった化学』(渡辺正・北條博彦著;日本評論社)
著者はあちこちで,中高の化学の内容に厳しいコメントをしている。 内容は間違いではないのだろうが,単位の表記へのこだわりなど,なんともうるさい人だなあという,あまり良くない印象であった。 そんな人がどんな本を書くのだろうと,少々意地の悪い目で読み始めた。 しかし,残念ながら(?),非常によく書けていると思った。 現象の整理だけで終わりがちな高校化学の内容を,電子の振る舞いやエントロピーなどをもちいて,なぜそのような反応が起こるのか,といったところまで踏み込んで説明してある。 説明の仕方も,定量的な議論や比喩も取り入れ,工夫されている。 自分があいまいな理解で済ませていたところも,しっかり説明されていて,勉強になった。 高校化学の内容をこの本で一から学ぶのは難しいと思うが,高校化学をひと通り学んだ人の学び直しには良さそうな本。 終章の高校化学の教科書批判は,この本全体から見ると,少々唐突。 日本と海外の教科書の厚さを比較したり,化学オリンピックを基準に,日本の高校化学を批判するのは,時々見る議論だが,あまり意味がない。 国際比較なら,教科書ではなく実際の授業,生徒の習得状況の実態を調べるべきだろう。教科書=授業ではないのだから。
by h-asa78
| 2008-09-28 21:58
| 本
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